【後半】~CFOキャリア戦略~石島ゼミOBの橋本宗之さん(SansanCFO)と永見世央さん(ラクスルCFO)にインタビューしました!

ページ公開日: 2023-08-05 14:48:13

最新の更新日: 2023-08-06 19:44:55

Featured Persons

橋本宗之,永見世央

Interview Contents

 

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INDEX

ESG投資について

ゼミ生からのQ&A

ー 新卒に戻れるとしたら

ー キャリアプランについて

エピローグ

 

 

ESG投資について

石島:今流行っていてかつ石島ゼミでも重点的に取り扱っているESG投資についてお伺いしたいです。橋本さんも永見さんもプライベート・エクイティ業務に携わってきた経歴をお持ちです。関連して、プライベート・エクイティと親和性が高いインパクト投資があります。環境や社会に関する今までのベースの価値から、投資をすることによって、アウトカムという付加価値を上乗せするのがインパクト投資かと思います。そうしたESG投資やインパクト投資について、どのように今考えていらっしゃるかなというのを伺いたいと思います。

 

橋本:ESG投資は、この5年くらいものすごく流行っていますし、投資家からもそういう観点で会社が見られているなというのはすごく感じています。そのため会社として、ESGへの取り組みを説明できるようにしなければいけないと思います。まだ現場とアカデミックな研究との間で、少しギャップがあるのかなと思っています。ESG投資が現場にだんだんとより浸透していくと、アカデミックな研究の問題意識が現場でも当たり前になっていくと思っています。

あとESGという枠組みは、今後形を変えていくのだと考えています。僕達は今、会社として「徳島県に学校を造る」という取り組みを支援しています。それを今のESGの文脈にあてはめると、本業とは関係なく、あまり評価はしてもらえないです。でも、学生が無償で5年間学べて、かつ起業家を生み出していこうと、とても社会に「いいこと」をしていると思っています。それをESGの文脈に沿わないからやらないかというと、そんなことはなくて、会社として支援したいなと思っています。

参考: 神山まるごと高専支援|NEXT|サステナビリティ | Sansan株式会社 (corp-sansan.com)

 

橋本:ただ、やっぱりESGに積極的に取り組むと定量的にリターンがあるのかというのは、とても難しい問題です。ESGに積極的に取り組むことにより、株を沢山持ってもらえますとか、プロダクトのブランド価値が上がりますとは言うものの、それを定量化するのは非常に難しいです。そこら辺はやっぱりある程度アカデミックな研究が入る余地があるのだろうなと思っています。研究者の間で、ESGについてこういう測り方どうですかとか、そういう議論がたくさん起こればいいなとは思っております。

 

石島:橋本さんありがとうございます。同じ質問で永見さんはESGについてどのようにお考えですか?

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永見:ちなみにESGって、大学だと具体的に何を勉強しているのですか?

 

石島:学術研究として今私がやっていることは、ESG投資は、リスク調整済みリターンを市場平均以上獲得しつつ、環境や社会にとっても良いことをする、それらを同時にできるのかということを、実証研究として盛んにしています。例えば、二酸化炭素をたくさん出す企業は株価が上がるのか、下がるのかとか。

 

永見:そういうことですか。

 

石島:ESGのシフトの仕方としては、G、E、Sというようなかたちかなというふうに思っていて。今はEが一番アツいかなと思っています。

 

永見:なるほど。それは実際株価パフォーマンスとどう連動するかという焦点での研究ですね。EとSとGのそれぞれのコンテンツについて、深く入り込んでいくというわけではなんですか?

 

石島:そこがまだ難しいところがあって、学術的にEの要素をなかなか測る手立てがないんです。学者として一応信頼できるのが、温対法(注:地球温暖化対策の推進に関する法律)やスコープ1、2、3に沿った二酸化炭素排出量があるかなと現段階では思っています。

 

永見:ありがとうございます。ESGの世界も本質的にやるべきことをやるみたいな世界と、教科書的な対応をするみたいな世界があると自分の中で整理しています。後者は結構分かりやすくて、さっきの橋本さんや石島先生の話みたいに、ESG的な取組みや開示をちゃんとしていると投資家に株を買ってもらえるとか、ESGの格付けが上がります、みたいな話です。それは上場会社としてマナーのようなものだと思っています。

 

ただ、実務を実際に事業会社でやっている立場からすると、それ以上に本質的な対応のほうがやっぱり大事です。例えば、Sで言うと、社内における男女の幹部の比率を50:50にするとか、これは女性というジェンダーだけではなくてLGBTも含めて考える必要があります。他にも外国籍の方の採用や活躍みたいな話も出てきています。そういった人的資本をどう取り扱っていくのか、みたいなのは本質的な話として、長期での会社の企業価値と連動する話だと思っています。例えば僕が行っているダイバーシティを促進するみたいなところも、それは業績にすぐに影響を与えたり、明日の株価に影響与えたり、という話じゃないですけど、会社を長期で強くする話だし、社会としてもやらなきゃいけない話なので、多少の非効率性も含めて、やり続ける、といった感じかなと思っています。

 

その観点で、僕は結構日本らしい研究でいうと、EよりSだと思うんですね。女性の社会進出が相当ほかの国と比べて遅れている、など人的資本というところをベースにして、ESGの研究をしてみるとかいうのは、結構大事なテーマで、そういうのを何か深掘ってみるとかというのは、ファイナンスで、かつESGを勉強している石島ゼミとしては、非常にユニークだと思いますね。

 

石島:実務とアカデミックな観点からのご意見ありがとうございます。

 

Q&A

―新卒に戻れるとしたら?

 

石島:ぜひせっかくのいい機会なので、学生のほうから質問させていただいてよろしいでしょうか? 

橋本:お願いします。

永見:なんでも大丈夫ですよ。

学生:貴重な話ありがとうございました。お2人が新卒に戻れるとしたら、どういった就活されるかというところ、それぞれお伺いしたいなと思います。

石島:いい質問だね。

学生:よろしくお願いします。

橋本:僕はSansanに入ったのが2017年で、それはこの会社ができて10年目でした。今周りを見ていて羨ましいなと思うのは、創業期からいるメンバー、僕が知らない苦労を乗り越えここまで来たのだな、というのをすごく感じることです。僕は後からジョインしているので、仲間はずれにされているわけじゃないですけど、その苦労を共にしてきた仲間、みたいなのはうらやましいなと思うことが多々あります。なので、戻れるとしたら自分で会社を友達とやって大きくしていく、みたいな経験をしたいなとは思いますね。

 

学生:ありがとうございます。永見さんはどうですか?

 

永見:似た話なのですが、やっぱり若いうちから活躍できる環境が絶対いいですね。40代になって、初めてバッターボックス立てるみたいなのって、つまらないと思います。なので、起業するとか、スタートアップに参画するとか、海外で仮想通貨ビジネスやるとか、すごく面白いと思います。

あと全く違う話で、結構面白いなと思うのが、時間で買えないものですね。例えば、何十年、何百年やっている酒蔵とかワイナリーを、自分が新しい時代に造り変えるとか。やっぱり自分の人生の時間軸を超えたアセットって、結構たくさんあって、我々数回くらい死んでも、その時間軸に追いつけないんですよ。現に世の中に現存していて、そういった過去からのアセットを蓄積しているものに触れるとか、キャリアで関わるとかというのは、全然違う話としては面白いと思いますね。

 

学生:貴重なお話ありがとうございます!

 

キャリアプランについて

石島:ほかに何か、ありますか? お願いします。

学生:今、僕が現時点で就職活動している中で、将来のキャリアプランについて、決めかねていたり、見えないところがすごくあり悩んでいます。

お二方が模索された中で、こういうかたちでキャリアプランを決めたであったり、キャリアプランなんて考えずに突っ込んだというのもそれも一つだと思うんですけど、何か僕たちに伝えられることがあれば、教えていただきたいです。

橋本:確かに就職活動している中で、キャリアに関する質問は僕も20年前にされたな、と思うし、今も面接のときにはしているなと思うんですけど、本音と建て前はやっぱりあります。就職活動という点で見ると、やっぱり自分の中でストーリーをつくって、この会社で頑張りたいって、建前としても言ってほしいなとは思います。でも、実際自分がその立場だったときどうかというと、そんなに長くは見通すことは出来ていなかったですね、正直。25歳でこれをやって、30歳でこれやって、というプランはあまりなくて、やっぱりその場に立ってみないと分からないことはたくさんあるので、具体的に道筋を立てるのは難しいなとは思っていました。

ただ、考え続けることはとても大事だと思います。人に話を聞いたりニュースを見たりと、いっぱいアンテナを張っておくと、いい話も入ってくるかもしれないです。キャリアについてはアンテナを張ってずっと考え続けようとは思って20代、30代をすごしていましたね。

 

学生:ありがとうございます。

 

永見:橋本さんと僕も同じで、就職活動では体裁上は整えたほうがいいと思っています。ただ、フューチャーキャリアとか聞いても、あまり意味がないと考えているので自分の面接で志望理由は聞かないですね。正直、自分もMBAのエッセイで、将来やりたいことって書いたことと、今やっていること違うので。

あと就職活動って自己分析とかしますよね。あれもあまり意味ないと思っていて、もっと純粋に、自分がやりたいこととか、そういうのに素直に向き合ったほうがいいと考えています。それがその、今の受けている最終面接の会社じゃなかったら、ドロップしてあげたほうがいいというふうには思っていたりします。ちなみに、やりたいことは何ですか?

 

学生:新規営業です。長期インターンで新規営業やっているときが一番楽しいというのは感じているので。

 

永見:営業という職種がいいのか、特定のそのビジネスとか商材を売りたいという意欲が強いのか、どちらですか?

 

学生:営業という職種が好きですね。

 

永見:であれば、営業というのを極められるような仕事を、会社のブランドに関わらず、いろいろと受けて見るのがいい気がしますよね。

 

学生:とても勉強になりました。ありがとうございます!

 

石島:お時間もそろそろということで、どうもありがとうございました。

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エピローグ

永見さん、ラクスルCEOへのご就任(2023.8.1付)、おめでとうございます!

橋本さん永見さんへのインタビューを通じて、面白いと思うことを見つけ勉強・追求し続けること、面白いことをやっていそうなコミュニティ(新たな職場や海外勤務・留学経験など)でチャレンジしてみること、何よりもお二人の人柄が良いこと、が印象に残りました。

インタビューは2022年11月29日(火)に行われました。インタビュイーの肩書や経歴はその時点におけるものとなっています。なお、記事の内容はインタビュイーご本人にご確認いただいております。

 

 

インタビュー企画: 中央大学石島ゼミ。記事編集:小木曽、高橋、留目、石島。

 

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